年: 2022年

ロラン・バルト「省察」

「私はきのう書いたことをきょう読み直す、印象は悪い。それは気持ちが悪い。腐りやすい食物のように、一日経つごとに、変質し、傷み、まずくなる。わざとらしい《誠実さ》、芸術的に凡庸な《率直さ》に気づき、意気阻喪する。さらに悪い …

加藤周一の、石川淳評(「日本文学史序説」)

「日本語の文学的散文を操って比類を絶するのは石川淳である。その漢文くずし短文は、語彙の豊かさにおいて、語法の気品において、また内容の緊密さにおいて、荷風を抜きほとんど鴎外の塁に迫る。・・・・・・荷風以後に文人と称し得る者 …

歴史

 自分が歴史の末尾に在る者だ、という意識に憑かれている。  僕は自分にはどんな円環もない、と感じている。  つまり、この一回限りの生だけが自分のものだというふうに思っている。  一回限りの痛み、悲しみ喜び、怒り―。  幾 …

永井荷風「銀座」

永井荷風の短編「銀座」の中に以下のような一節がある。 ……停車場内の待合所は、最も自由で最も居心地よく、聊かの気兼ねもいらない無類上等の 〔Cafe’〕 である。耳の遠い髪の臭い薄ぼんやりした女ボオイに、義理 …

あみだくじ

 あみだくじというものがある。  人生は畢竟、それと同じではないか。  全てを白日の下に晒して検分して認識出来なければならないという、  神経症的な、強迫観念的な奇矯さの中から抜け出して、  もっと自由に考えたら良い。 …