荷風の背中と「明月珠」
2000年に発行された、三田文学創刊九十年記念の「三田文学名作選」の中に、石川淳の「明月珠」を見つけたので読んでみた。 「三田文学名作選」の編集後記「編集室から」によれば、この選集は「第一号三田文学以降のすべての掲載 …
2000年に発行された、三田文学創刊九十年記念の「三田文学名作選」の中に、石川淳の「明月珠」を見つけたので読んでみた。 「三田文学名作選」の編集後記「編集室から」によれば、この選集は「第一号三田文学以降のすべての掲載 …
小林秀雄は『批評家失格』の中の「近頃感想」の中で次のように書いている。 「嘘をつくからいけないのだ。己を語ろうとしないからいけないのだ。 借りもので喋っているから種切れになるのである。 身についた言葉だけ喋っていれば、 …
井伏鱒二の「太宰治」(中公文庫)を読んだ。 本書は、太宰治の師匠であった井伏鱒二が、二十年ちかくにわたる交遊の思い出を綴ったものである。 自分で書く言葉が、自分自身にとってヨソヨソシク感じられて困って …
『太宰よ! 45人の追悼文集 さよならの言葉にかえて』(河出書房新社編集部編)を読んだ。 その中に、平林たい子の「脆弱な花」という太宰への追悼文が収められている。 その中で平林は太宰の小説について次のように語る。 …
年が明けてすでに二十五日が経つ。 昨年はSNSで読書アカウントを始めたこともあり、簡単に読後感を綴っていたのだが、「感想」を簡潔に書くと言うのはなかなかに難しい。特に「ネタバレ」せずに書くことは難しいと感じた。 昨 …
この記事は多分、一冊の本についてその感想を書いたり、況してや書評を書いたりするような意味での「レヴュー」にはならないと思う。 私は、最近、石川淳の「焼跡のイエス」「処女懐胎」などの短編をいくつか読んだ。 (なぜそれ …
石川淳(1899〜1987)は1935年、処女作「佳人」を発表し、1937年「普賢」により芥川賞を受けた。 さらに第二次世界大戦後(1945〜)も、1946年に「焼跡のイエス」1948年に「処女懐胎」1949年「最後の …
2017年度・第157回芥川賞受賞作の「影裏」(文芸春秋社)を読んだ。 この作品のあらすじを逐一書くつもりはない。 だが、一応これくらいは事前情報があってもいいということで、書籍の帯に書かれてあったものを記しておく …
イエスの生涯をキリスト教作家の遠藤周作が自らのイエス解釈を含めて物語っている。 「無力な人、愛の人、イエス」像は大変興味深かった。 徹頭徹尾、「愛」に生きようとし、愛を実践し、愛に死んでいった人間・イエス。 その真 …
「異端」とは何だろうか? 「正当」の囲いの外に弾かれたものが「異端」なのだろうか。 だとするなら、「君」は「正当」ならぬ「異端」の存在ということか。(「だった」ということなのでそれは過去のこと、ではあるのだが。そして/ …