見えるものと、見えないもの


 全てが明朗な明るさの中に存在するわけではない。全てが明らかにされているわけでもない。隠されているもの、見過ごされている何か、そのようなものの中から任意に、気まぐれに、僕たちは様々なことを知ったり知らなかったりしながら、日々を暮らしている。

 そのこと自体は特に問題ではないし、誰も気にしない。例えば、いつどこで誰と誰の間に子供が生まれ、同じ時間にどこで誰がどんなカタチで死んでいきつつあるのか、などということを知ろうと思う人間なんて、おそらく誰一人いないように。
 そんな世界に生まれた僕たちの、唯一の希望は、僕たちの声がどこかに届き、誰かがそれを受け取ってくれるかもしれないという、非常に心もとない、儚いものだけだ。
 それは一夜の夢である。朝になればすべてが暴かれる。現実という魔物の口の中に自ら入ることを余儀なくされる朝がくるのだ。
 そうしてやがて、そんな無残な累々たるかつての夢見人たちの屍の前に、言葉を失くして、心も失くす。
恐怖や嫌悪だけが、残っている、朝だ。人々は泣きながら唄うだろう。
おはよう、世界、と。