自分が歴史の末尾に在る者だ、という意識に憑かれている。
僕は自分にはどんな円環もない、と感じている。
つまり、この一回限りの生だけが自分のものだというふうに思っている。
一回限りの痛み、悲しみ喜び、怒り―。
幾度も幾度もその一回限りを繰り返しながら今まで生きている、そう思っている。
目に映るもの、肌に触れるもの、舌に感じるもの、耳に聴こえる様々な音や声、嗅がれる匂い、そんなものの一つ一つに一度きりの絶対性を感じる。
僕はこの街で、ひとりの男とひとりの女を親とし、産まれた。
あの日、あの瞬間に、この世に産まれ出たのだ、この身をもって。
傷ついたこの身を持って。
僕は実際、傷ついた小動物として存在した。生死すら定かではない、真っ黒に鬱血した「赤ん坊」として。