荷風の背中と「明月珠」

 2000年に発行された、三田文学創刊九十年記念の「三田文学名作選」の中に、石川淳の「明月珠」を見つけたので読んでみた。  「三田文学名作選」の編集後記「編集室から」によれば、この選集は「第一号三田文学以降のすべての掲載 …

大岡昇平の涙

 ルソン島中西部のフィリピン(ミンドロ島)において暗号手として戦地にいた大岡昇平が、アメリカ軍の俘虜となり、レイテ島タクロバンから復員して来たその苛烈な体験を一編の小説に書こうとしたとき、 「あんたの魂のことを書くんだよ …

「批評家失格」

 小林秀雄は『批評家失格』の中の「近頃感想」の中で次のように書いている。 「嘘をつくからいけないのだ。己を語ろうとしないからいけないのだ。 借りもので喋っているから種切れになるのである。 身についた言葉だけ喋っていれば、 …