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「先導獣の話」古井由吉

  古井由吉「先導獣の話」読了。  僕たちがしばしば「狂気」と呼ぶのは、認識の裂け目に生まれた特殊な想像力のことか。 群衆(群集)の中に秘められた殺到の秩序がいつか崩れる時を夢想する主人公。 彼が駅の群衆から主人公が喚起 …

荷風の背中と「明月珠」

 2000年に発行された、三田文学創刊九十年記念の「三田文学名作選」の中に、石川淳の「明月珠」を見つけたので読んでみた。  「三田文学名作選」の編集後記「編集室から」によれば、この選集は「第一号三田文学以降のすべての掲載 …

大岡昇平の涙

 ルソン島中西部のフィリピン(ミンドロ島)において暗号手として戦地にいた大岡昇平が、アメリカ軍の俘虜となり、レイテ島タクロバンから復員して来たその苛烈な体験を一編の小説に書こうとしたとき、 「あんたの魂のことを書くんだよ …

「批評家失格」小林秀雄

 小林秀雄は『批評家失格』の中の「近頃感想」の中で次のように書いている。 「嘘をつくからいけないのだ。己を語ろうとしないからいけないのだ。 借りもので喋っているから種切れになるのである。 身についた言葉だけ喋っていれば、 …

太宰治の「花」

 『太宰よ! 45人の追悼文集 さよならの言葉にかえて』(河出書房新社編集部編)を読んだ。  その中に、平林たい子の「脆弱な花」という太宰への追悼文が収められている。  その中で平林は太宰の小説について次のように語る。 …

読書記録

 年が明けてすでに二十五日が経つ。  昨年はSNSで読書アカウントを始めたこともあり、簡単に読後感を綴っていたのだが、「感想」を簡潔に書くと言うのはなかなかに難しい。特に「ネタバレ」せずに書くことは難しいと感じた。  昨 …

人はいかにして作家になるのか

「アゴタ・クリストフ自伝 文盲 L’Analphabete」(訳・堀茂樹 白水社)を読んだ。  アゴタ・クリストフは、一九八六年に出版された「悪童日記」およびその続編「ふたりの証拠」、「第三の嘘」の作者である …