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書く/読むためのfragment
 
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小説を読むこと。

大江健三郎が亡くなって、「読書」といえば大江健三郎の本ばかり読み、考えるようになってしまった。 より実感的な言い方で言えば、その作家の一生を通して書かれ続けた作品の熱量と物理的な量を前に茫然として途方に暮れているといった …

飯島耕一「ゴヤのファースト・ネームは」

   飯島耕一は、1953年、第一詩集『他人の空』を刊行し、戦後世代の叙情性をうたう詩人として世に出た。これは戦後詩の象徴的な作品とも言われる。  その後も詩作のほか評論や小説など幅広く執筆活動を行った。    飯島は鬱 …

雪の降る街

 雪が降り積もる夜を眠り続け、朝になって窓の外を見た。  どこか頼りない、弱々しい美しさが目に映った。  白く様変わりした、黒い土と、本来陰鬱な田舎の家々のその屋根。  それは、白い空を背景に持った雲のスケッチのように輪 …

アルチュール・ランボー(永井荷風 訳)「そぞろあるき」

蒼き夏の夜や、 麦の香に酔ひ野草をふみて 小みちを行かば、 心はゆめみ、我足さわやかに わがあらはなる額、 吹く風に浴みすべし。 われ語らず、われ思はず、 われただ限りなき愛、 魂の底に湧出るを覚ゆべし。 宿なき人の如く …

ロラン・バルト「省察」

「私はきのう書いたことをきょう読み直す、印象は悪い。それは気持ちが悪い。腐りやすい食物のように、一日経つごとに、変質し、傷み、まずくなる。わざとらしい《誠実さ》、芸術的に凡庸な《率直さ》に気づき、意気阻喪する。さらに悪い …